@Osaka Endosky Journal

焼いて粉にして屁で飛ばせ

文章から溢れるってのはこんなことなんだなあと

 佐々木中 氏

 私は産経新聞の今回の決定に抗議します。

 

 ぼくには政治を語るようなバックグラウンドは全く無いけれど、書評を通して、こんな文章を書ける人こそが、実に哲学者であると思う。全身全霊、哲学者なんだと思う。

 

 坂口安吾『堕落論』を紹介する(仮題)

 昨年夏に刊行された石原慎太郎氏の著作『新・堕落論——我欲天罰』(新潮新書)は瞠目すべき著作である。氏は、現在の日本を「豪華客船タイタニック号」「贅沢に慣れきった」「華やいだ悲劇」だと診断し、国民全員の「我欲」、すなわち「金銭欲、物欲、性欲」こそが堕落の原因と断じ、「ここまで堕ちた民族が大きな罰を受けない訳はない」として、東日本大震災こそ天罰だと力説、堕落と対米従属から脱する為に自前の核武装が必要であって、原発廃棄などは「ヒステリック」な「愚か」さだと言う。氏の国民への罵声は止むことがない。曰く「愚劣な官僚」、「韓国が行っているように軍役に赴かせる」ことが必要な位の「若い世代の弱劣化」、「大人たちの物欲、金銭欲、性欲にまかせる心の荒廃」、「経済至上主義」、「政治家を含めて日本人は幼稚」「『こらえ性』の欠如」。しかし奸賊を「誅する壮士はどこにもいはしない」。続いてネットとゲームとケータイに溺れる若者たちを変態性欲と結びつけ、真の恋愛と性を知らぬと糾弾する。終戦当時十四歳であった筈の氏が、自らを戦争体験者であるかのように語りつつ。——全く、感動的な、素晴らしい明察と言うべきではなかろうか。ご自身のような政治家が命脈を保っていられる理由を語り尽くして余すところがない。その幼稚な国民こそが、まさに氏を支持し、黙認しているのだろうから。

 安吾の「堕落論」から「続堕落論」を経て「もう軍備はいらない」に至る徹底した世界史的思考には、石原ごときの文言がつけいる隙は無い。「堕落せよ」「嘘をつけ!嘘をつけ!嘘をつけ!」と叫びつつ、しかし強烈な緻密さで息を呑ませる安吾の堕落論、「人に無理強いされた憲法だと云うが、拙者は戦争はいたしません、というのはこの一条に限って全く世界一の憲法さ」と言い放つ安吾こそが、今読まれねばならない。